ヨーロッパ・静止した時間 WHERE TIME HAS STOPPED

写真だけでなく芸術や文学などの分野にも関心を寄せ、池田満寿夫や河原温、瀧口修造などの芸術家や、東松照明、細江英公らといった写真家らとも交流を重ね、戦後日本の写真表現を塗り替えた写真家・奈良原一高による1967年発刊の1st.写真集の復刊版。1962年から3年間ヨーロッパに滞在した作者は、3万枚を超える量のネガを撮影しており、本書にはその中から選抜された135枚を収録して発表された。目の前のヨーロッパを現実の存在としてだけでなく、日本人の心象風景と捉えて撮影した独自の視点は、今も色褪せることはなく、魚眼レンズにコラージュ、長時間露光や特殊加工など前衛芸術家らと交流のあった作者ならではの表現技法は当時の写真界に大きな波紋を生み、賛否両論であった。しかし芸術選奨文部大臣賞・毎日芸術賞・日本写真批評家協会作家賞を軒並み受賞するなど高く評価を得て、その後の多くの写真家らに影響を与えた。復刊にあたって、作者のこだわりであったのりしろを少なくして開きやすい製本は継承しつつ、作者のプリントを多数収蔵している東京国立近代美術館 主任研究員の増田玲による作品解説が追加されたほか、観音開きに広がるページを6か所にわたって追加し、より作者の世界観を堪能できるよう更新と精製が施された一冊。

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