Thinking with Your Hands

1948年にヨーロッパで初となるGRP (ガラス繊維強化ポリエステル)を用いた椅子『scobalit chair』を発表するなど、スイスの工業デザインにおける先駆者的存在として活躍しただけでなく、1941 年以降からは美術工芸学校で新設されたプロダクトデザインコースの講師を40年以上にわたって務める中で多くの優秀なデザイナーを輩出し、教育者としても大きな功績を残したWilly Guhl。歴史的な様式や装飾を否定し、工業化が進む中でもたらされた新たな技術を積極的に取り入れる気風にあった当時、作者は単にシンプルなだけでなく、扱いやすさや座りやすさといった「快適性」をもたらす要素に重点を置いてデザインすることで、椅子をはじめ植木鉢や芝刈り機といった広範にわたる人々に寄り添うプロダクトを世に送り出した。それらは「機能的」かつ「本質的」で、安価に量産可能なプロダクトであったことから瞬く間に人々の日常生活へと浸透していき、その後のモダン・デザインの立ち振る舞いに大きな影響を及ぼし、作者のデザイン理論は理想的な例として世代を超えて現在のデザイナーにも脈々と引き継がれている。本書はプロダクトと教育実践について、当時のデザイン業界を取り巻く状況の解説をはじめ、作者が手がけたプロダクトの数々を図面やスケッチ、カタログに広告など様々な資料とともにテーマ別で包括的に取り上げた初となるモノグラフ。

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