Terry Fox - Catch Phrases

ドイツの現代アーティスト、Terry Fox（ティリー・フォックス）による作品集。
冷戦下のヨーロッパが東西対立の緊張を抱えていた時期と重なる1981年から82年にかけて西ベルリンに留学していたフォックスは、米軍のラジオ放送を耳にする中で出てきた「平和のための武器」「恐怖の均衡」「ソフトターゲット」といったフレーズを通じて、耳触りの良さを感じるとともに、確かな軍事的・抑圧的文脈を司る「キャッチ・フレーズ」としての役割も嗅ぎ取った。
フォックスはこの体験をきっかけに、鉛筆やフェルトペンを用いて紙上のグリッドにラジオで流れるフレーズの数々を細密に書き込んだ上に、建築の壁や街角の落書きから採取したスワスティカやドルマーク、矢印などの記号を重ねたほか、最終的には鋼鉄の棒を用いたオブジェを構成することで、言語が視覚・記号・物体へと変換される過程を可視化した作品シリーズ 「Catch Phrases」を生み出した。
本書ではケルンのコルンバ美術館が所蔵する「Catch Phrases」シリーズの5点の作品を起点に、本シリーズの「軍事用語・放送用語」という語彙を再利用することで、言語の機能や記号の効力について探求されており、フォックスの卓越した思考と制作の過程を洞察的に読み解くことができる。

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