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アイルランド出身の写真家・Eamonn Doyle（イーモン・ドイル）が、布に全身を覆われた人物が風や陽の光を受けながら佇む亡霊のようなシルエットを記録した写真と、ドイルの母・キャサリンが1999年に33歳の若さで急逝した息子でドイルの兄にあたるキアランに宛てて自身が2017年にこの世を去るまで書き記し続けていた手紙を重層的にまとめた、喪失や行き場のない悲しみ、そして死者の冥福に祈りを捧げた一冊。 これまで都市とそこを行き交う人々の動きが生み出す影響や形態に関心を持って自身が生まれ育ったアイルランドの首都・ダブリンで撮影に取り組んできたドイルであるが、今作ではこの都市から離れて、アイルランド西端に位置する大西洋沿岸の手付かずな自然の中で撮影に臨んでおり、海上や荒涼とした平原、そして青空の下と場所や身に纏う布を変更しながら、時間帯や天候によって異なる陽の強さや角度で全く異なる質感や色を見せるシルエットをカラーで捉えた。 さらにその合間には砂浜の波紋などをモノクロで捉えた写真が挟み込まれており、その対比はまるで生と死が常に隣り合わせであることを暗示しているかのようである。 そしてこれらの作品群とともに半透明な透過性のある紙に印刷された母・キャサリンがキアランに宛てた手紙を添えることで、悲しみや息子への愛の重さが質量を伴って示されている。

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