EXECUTIVE MODEL

アメリカの写真家で教育者でもあるRon Jude(ロン・ジュード)が、1992年から1995年にかけてアメリカ国内に点在する金融街を巡り、その路上でスーツに身を包んだビジネスマンを追いかけながら、彼らの背中や手元、持ち物などを約1mほどの至近距離で隠し撮りした写真をまとめた一冊。
この撮影が実施された1990年代のアメリカは長期にわたって安定した成長が続く良好な経済状況にあり、この経済成長に深く携わった証券会社や銀行で働くビジネスマンたちは、アメリカ国民の間で<男らしさ>を象徴する憧れの存在に位置付けられていた。
しかしロッキー山脈をはじめ自然豊かな環境が広がるアイダホ州の田舎の労働者階級で育った作者にとって、経済を牽引しその対価に多額の報酬を得ているビジネスマンたちの姿は、憧れを持つどころかむしろ得体の知れない<異質>な存在として目に映った。
本書には当時住んでいたアトランタを起点に、シカゴやニューヨーク、サンフランシスコといった金融街のある都市を巡って撮影されたビジネスマンらの姿が収められており、顔が見えない匿名の状態であることで緊張感とともに作者が感じた<異質さ>がより際立っている。
またここでは作品だけでなく作者本人による序文のほか、美術評論家・美術史家のSimone Ciglia（シモーネ・チリア）によるエッセイも合わせて収録。
なお本書は2012年に刊行された同名の写真集の第二版にあたるもので、改訂にあたってはカバーデザインの変更のほか、前版よりも手に取りやすい小さなサイズへと変更が加えられている。

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