Ícaro

高い塔に幽閉されていた発明家の父・ダイダロスとその息子・イカロスがその場に落ちていた鳥の羽を蝋で固めて翼を作り、その翼を身に付けて空を舞って無事に脱獄に成功したのも束の間。海と太陽には近づくなという父からの忠告を忘れ、空を飛ぶことの愉快さのあまり太陽に接近し、熱で蝋が溶けて息子・イカロスは墜落してしまったという失敗談から、人間の傲慢さと技術進歩に対する戒めとして語り継がれているギリシャ神話のイカロス伝説。本書はスペインで活動を行う写真家・Irene Zottola（アイリーン・ゾットラ）が、この寓話と路上で拾った百科事典から得た着想を元に制作した一冊。ここではフィルムで鳥の姿を撮影し作成したネガを暗室内で複数枚重ねて焼いた写真や、プリント後の印画紙を破いて作成したコラージュなど、様々な表現手法を用いることで人間の鳥に対する羨望の眼差しを多面的に分析しており、なぜ人は鳥を憧れの対象に位置付けるのかについて、上昇と下降を繰り返す鳥の飛行軌道と人間の生涯を重ねながら紐解いている。　

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