fw: drawing

定規を用いて描いた狂いなき直線と、即興的な手癖を交えた曲線が交錯したドローイングを制作するアーティスト・文谷有佳里の初となる出版形態での作品。
大学で彫刻科の友人と知り合ったことをきっかけにドローイングの面白さに目覚めた文谷は、専攻である作曲を学ぶ傍ら、幼少期に少女漫画の線を真似して描いていた頃に身に付けた感覚的な曲線を素地にして、作曲とその周辺の知識、さらに従来では不可能とされていた形状の建築物をコンピュータ技術を駆使することで実現させたZaha Hadid（ザハ・ハディッド）や、音楽を学ぶ中で限界を感じて建築へと転向したDaniel Libeskind（ダニエル・リベスキンド）といった異色の建築家による作品や図面など、分野を横断して吸収を重ねていくことで独自の表現を切り拓いてきた。
ここでは886ページの大ボリュームで初期作品から近作までを網羅して収録。そのすべての作品には機械学習によるアルゴリズムを用いた分割・トリミング処理が施されており、意図的に編集における人為性が排除されている。しかし対照的にレイアウトや孔版を用いたリソグラフ印刷、さらに丁合までの製本過程はあえて手作業で行われており、片面カーボン紙を用いた転写特有のムラ加減も職人による熟練の技で見事に表現されている。さらに冊子カバーには文谷が書き下ろしたドローイングも記入されており、即興ならではの一点一点異なる表情を楽しめる無比の印刷物に仕上げられている。

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