THE AMERICANS

2024年に生誕100周年を迎えたことと「MoMA（ニューヨーク近代美術館）」で大規模な個展『Life Dances On: Robert Frank in Dialogue』が開催されたことを機に、アメリカの出版社・apertureより再販されたスイス人写真家・Robert Frankによる作品集。
スイスで生まれ育ったのちにアメリカへと移住し、「アメリカを撮る」というテーマでグッゲンハイム奨学金を授与されたフランクは、1955年から56年までの約9ヶ月間にわたってアメリカ全土を車で巡り、一人の移民として客観的にアメリカ人の実態を捉えた本作を成果物として生み出した。しかしこの撮影が実施された1950年代末はアメリカが第二次世界大戦で勝利し、のちに「黄金の50年代」と呼ばれるほどに経済的にも物質的にも豊かになった一方で、人種差別のほか景気の停滞、そして貧富の差などこれまで目を伏せてきた問題が多数浮かび上がってきた時期であったために、これらの問題を嘘偽りなく赤裸々に突き付ける本作はアメリカ国民にとって受け入れ難く、1958年にアメリカで発売された際には大きな非難を受けた。
しかし現在では約28000枚という膨大な写真群から自ら厳選した83枚のみで対比や連続性を意識しながら緻密に構成されている点や、当時としては画期的な個人の心境や感情を写真に移入している点などから、様々な出版社より再販され、現在では写真集における<金字塔>として高い評価を得ている。
今回の再販にあたっては、2008年にドイツの出版社・Stedilより発売された制作段階から装丁や構成などフランクが自ら全てに携わった版を元に制作が行われており、本書においてもフランクの意図を尊重し何も編集を加えないそのままの状態が維持されている。

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