The Final Winte

2007年以降はドイツのダルムシュタット応用科学大学で〈ドキュメンタリー写真〉に関する科目の教授も務めているドイツ・ヘッセン州出身の写真家・Michael Kerstgenが、ソビエト社会主義共和国連邦（以下：USSR）が解体される間際にあたる1990年から1991年にかけての冬に撮影した街ゆく人々の様子を収めた作品集。東西ドイツを隔てていた「ベルリンの壁」が崩壊した2年後の1991年12月にゴルバチョフ大統領の辞任をもって消滅を迎えたUSSRは、バルト三国の分離独立や国内でのクーデターといった出来事が重なり、既に限界を迎えつつあった社会主義国家体制にとどめを刺された。本書ではそうした激動の渦中ゆえの政治的混乱に揺れ動かされる人々の姿が捉えられており、その一人一人の顔には怒りや落胆、絶望に無力感といった憂いを帯びた表情が浮かんでいる。かつて世界初の〈社会主義〉国家として登場し、〈資本主義〉のアメリカ合衆国と対峙する形で宇宙開発や核兵器実験と熾烈な競争を繰り返して一時は栄華を極めたものの、失速していったUSSR。ここではその晩年の姿が捉えられていることから、当時を振り返る歴史的な資料としての価値も高い一冊。

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