TOKYO STYLE

学生時代から創刊して間もない頃の雑誌「POPEYE」、さらに「BRUTUS」の創刊に携わるなど、作家・編集者として活動を行っていた都築響一が、その後〈写真家〉という新たな肩書きを持つきっかけとなった、今はなき出版社・京都書院より発行の写真集『TOKYO STYLE』（1993）。何か一つのテーマについて深掘りしてみたいという思いで出版社から独立した作者は、若者らと関わる中で「東京で暮らす若者たちのリアルな生活の様子を記録する」という構想を思いつき、様々な出版社にこの企画を持ち込んだ。しかし全く相手にされなかったため、だったら自分でやろうと発起。撮影のために大判フィルムカメラを購入し、スクーターの足元に乗せて運びながら都内を巡って、バブル崩壊前後の2年間にわたって地道に撮影を継続して実施した。そうして生まれた本書のページをめくっていくと、限られたお金とスペース内をやりくりしながら築かれてきた、それぞれの部屋の主人らの多種多様な「住処」との出会いが待ち受けており、その猥雑で生活感が漂うリアルを捉えた写真は、これまでコンパクトな文庫本サイズで再販が行われるなど90年代を代表する不朽の名著として世代を超えて愛され続けてきた。そんな不朽の名著が30年以上の時を経て、このたびスペイン・バルセロナの出版社「apartamento」より初版当時の贅沢なページ構成はそのままに、装丁を刷新して刊行が決定され、ついに世界へと羽ばたく時を迎えた。新装にあたって、作者の長年の友人であるアメリカを拠点として活動する作家Barry Yourgrauが序文を寄稿しているほか、作者が自ら書き下ろしたあとがきも収録。30年以上の時を経て迎えた、新たな門出を祝している。

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