SWISS

文筆家としても活動を行い、複数の視点から〈女性〉や〈家族〉について紐解いてきた写真家・長島有里枝が、2009年にスイス西部のエスタバイエ・ルラックという小さな町にあった「Village Nomade」主催のアーティスト・イン・レジデンス（自治体や企業などが国内外からアーティストを招待し、招かれたアーティストは滞在期間中、食事や宿泊に制作費といった支援を受けながら、その場所に繋がりのある作品の制作を行う事業）に参加した際に撮影された写真と、滞在期間中に綴っていた日記に加えて、スクラップブックのように、移動の際に使用した航空券や列車のチケットを共に織り交ぜて収録した作品集。2011年の第二版以降は絶版となっていたが、この度13年ぶりの重版を迎えた。スイスを訪れる少し前、作者は庭づくりを熱心に行っていた亡き祖母が25年前に撮影していた花のカラー写真を収めた小さな箱を見つけ、この箱に収められた写真一枚一枚を通して、祖母が花や植物へと注いでいた眼差しを感じるとともに、時を経てもなお残る祖母の花へと向けた慈しむ心の存在に驚かされた。本書にはこの出来事をきっかけに、亡き祖母に思いを馳せながら撮影された前述の「Village Nomade」で咲く植物の姿とともに、一緒に連れ立ってきた息子や、滞在中に過ごした室内の様子を収録。日記と写真を合わせて読み進めていくことで、その当時の作者の心の機微を感じ取ることができる一冊。

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