Skid Row

アメリカ・ケンタッキー州出身の写真家・Charles H. Traub（チャールズ・H・トラウブ）が、1970年代後半にシカゴ・アップタウンとニューヨーク・バワリーの二つの通りで撮影したポートレートをまとめた作品集。
父からカメラを譲り受けたこと、そして故郷のケンタッキー州で活動していた写真家・Ralph Eugene Meatyard（ラルフ・ユージン・ミートヤード）との出会いをきっかけに写真家の道を志したトラウブは、日本の写真家・石元泰博も在籍したアメリカ・シカゴの美術学校「シカゴ・インスティテュート・オブ・デザイン」に入学し、在学中は抽象写真からドキュメンタリーまで幅広い作風で知られる写真家・Aaron Siskind（アーロン・シスキンド）に師事。
卒業後は1976年からモノクロフィルムからカラーフィルムでの撮影に切り替えてシカゴやニューヨークの街で道ゆく人々の顔から肩までを捉えた『Street Portraits』を発表し、トラウブは一躍その名が知られるようになった。
本作はこのカラーでの撮影に移行する以前にモノクロで撮影していたシリーズで、ホームレスの人々が持つ根源的な尊厳と人間性を記録することを目指したもの。トラウブの意図は、単なる野次馬的な視線（ヴォワイアリズム）ではなく、「喪失の経験をカメラで捉えようとした」と述べている。
彼らが都市の歴史的アイデンティティの形成において果たした重要な役割を再認識させる、貴重な記録となる一冊。都市が「アーバンシック」な変貌を遂げる中で失われつつある、彼ら「失われた貴族たち」の持つ気高さを浮き彫りにする。

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