Land Loss

ロンドンを拠点に活動する英国の写真家・Max Miechowski（マックス・ミエホフスキー）が、2020年の新型コロナウイルスによるロックダウン期間中に取り組んだロードトリップの最中に出会ったイングランド東部の海岸線に程近い場所を舞台に、そこで広がる風景とその場所に暮らす人々の姿を通じて、時間やコミュニティ、回復力について明らかにした一冊。
この舞台となった海岸線は波が高く荒れやすい北海に面していることから、以前よりヨーロッパの中でも特に海岸法面の侵食が激しい地域として知られていたが、近年の温暖化による海面上昇による影響で従来とは比べられないほどの速度で侵食が進んでおり、海岸線のすぐそばに建つ何世代にもわたって継承されてきた家屋も、解体または減築するなどの対応を迫られている。
そうしたいつ住めなくなるのか分からない不安と緊迫感のある状況でありながら、この場所には豊かな自然や陽の光、そして侵食で生み出された雄大な大地の光景が広がっており、本書には作者が海岸線や道、そしてコミュニティーで暮らす住人のポートレートなどを中判フィルムカメラを通して捉えた様々な光景を収録。
陽の光に包まれた穏やかな時間だけでなく、波によって激しく削り取られた法面の姿も共に並置することで、不確実な要素が常に隣り合わせの暗い未来が待ち受けている状態に不安を抱くばかりではなく、今の瞬間とこの場所で得られる魅力を享受する人の達観性と自然の無常さが示されている。

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