LIMBURG

ベルギーを拠点に活動する写真家・Lars Duchateau（ラース・デュシャトー）が、ベルギー北東部のリンブルフ州で発行されている地方新聞「Het Belang van Limburg」のうち、2019年11月から2023年10月にかけて発行された号の地域欄に掲載された、テキストのみか、ありあわせのストックフォトが添えられた短いテキストのみの記事を選び、それぞれの内容に見合った写真を大判と中判のフィルムカメラを用いて撮影したシリーズ『Limburg』をまとめた作品集。 突如として出現した何百におよぶキノコの群生に、覗きの容疑で捕まった犯人の裁判、そして沼で立ち往生した3人の女性の話や、長い間行方知れずだった結婚指輪の発見など、国中へ向けて大々的に報道するほどの出来事ではないが、関心を引かれる記事の数々より着想を得て生み出される『Limburg』シリーズは、本来の記事の情報価値がすぐに鮮度が失われる短命なものである一方で、デュシャトーによる写真は早くて数週間から数ヶ月、そして時には年単位にわたる長期間にわたって練った構想を基に作成されており、元となる情報は同じでありながら、熟考を重ねることで定まっていた確かさがあることで、流行や情報の劣化とは程遠い普遍性が宿っている。 作品コンセプトの面白さだけに逃げることなく、じっと被写体と向き合うことで研ぎ澄まされていった構図や光の加減によってもたらされた写真それぞれに確かな強度を感じる一冊。

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