日本建築の擬

平安時代から江戸時代にかけて建てられた日本の木造建築の空間と構造は一見すると調和しているように見えるが、実は調和しているかのように[擬態]しているのではないかという問いを出発点にして、「擬（なぞら）える」をテーマに全国各地を巡った実地調査とその後の振り返りによる成果をまとめた一冊。 本書は建築家の福島加津也と冨永祥子が共同で運営する建築設計事務所「FT Architects」の出版部門・ガデン出版の「bau kunst」シリーズ・第3作として発表された。 再録されたニューヨーク近代美術館のキュレーターであるアーサー・ドレクスラーによるテキスト『The Architecture of Japan』を導入に、第1章では兵庫県小野市の浄土寺浄土堂や広島県福山市の明王院本堂といった寺院をはじめ、静岡県田方郡韮山町の江川家住宅など、建てられた時代や場所、用途も異なる13の事例が取り上げられており、多数の図案と写真のほか、時には漫画も交えてまとめたリサーチの成果を掲載。 第二章ではこの成果を踏まえて、建築史家・光井渉や建築家・難波和彦、そして構造家・多田脩二と異なる分野の専門家らの考察や対談内容をまとめた論考も収録されており、日本建築において「擬（なぞら）える」とはどのような手法であるのかについて紐解くと同時に、将来この建築様式をいかに継承・発展することが可能かについても考察されている。

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