THRESHOLD

スウェーデンの写真家・Mårten Langeが過去5年以上にわたって世界中の都市で見かけるたびにモノクロームで記録した何もない空っぽのアパートや店舗、オフィスの様子をまとめた作品集。書籍名の〈threshold〉は、「敷居」や「玄関」という意味で用いられる英単語で、この意味に呼応するように全ての写真には「部屋の入り口」が要素として含まれている。それだけでなく〈threshold〉という単語は「出発点」や「開始点」という意味も有しており、同様に作品一枚一枚にも、この空っぽの空間が生まれるまでの背景にある、それぞれの空間で過ごしていた人々は去るために、そしてこれから借りる人々はここへと引っ越してくるために行われたであろう荷造りや移動といった身体的な動作をはじめ、旅立ちや再出発への期待や不安といった感情の動きまで包括されている。これから新たな物語が始まる幕間か、はたまた物語に幕を下ろした後なのか。そのどちらであるのかは明らかにされていないが、時間の表裏を問わずに両側面から際限なく想像を膨らませることができる一冊。

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