Dora, Yerkwood, Walker County, Alabama

愛知県出身で、2002年以降からはニューヨークを拠点に、『louis vuitton』や『CHANEL』といったブランドのコレクションの撮影を担当するほか、作家として日常の人々のドキュメンタリー写真を撮り続けている写真家・長坂フミの作品集。書籍名は7年もの長期に及ぶ撮影地となった、アメリカ合衆国南部に位置する「アラバマ州・ウォーカー郡・ドラ」を指しており、このニューヨークから遠く離れたこの場所へと作者が辿り着いたのは、2016年に同じ住宅地に住んでいた隣人であるターニャとの偶然の出会いにまで遡る。なぜならこの撮影地はターニャの生まれ育った場所であり、作者が米国のどの小さな州にも旅行した経験がないことを知ったターニャの提案がきっかけではじめて訪れたためである。このドラは都市の中心部から離れた場所であるために、アジア人と出会ったことがある人はごく僅かで、通常であれば怪しい人物として警戒されてしまうが、作者は「ターニャの友人」という紹介もあって快く受け入れられた。本書にはそうした経緯を経て、徐々に町の人々と親睦を深めながら撮影されたポートレートや町の風景を収録。そこに暮らす人々の穏やかなまなざしと、日本から遠く離れた場所ながら、どこか郷愁を覚えるあたたかな写真が印象深い一冊。

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