READYMADE

商品撮影を中心に活躍する広告写真家・金子親一が、食器用洗剤や漂白剤などに用いられるプラスチック製の容器を被写体に、商品名が記されたラベルを剥がした「丸裸（ヌード）」の状態を撮影した作品集。中の液体の粘度に応じて扱いやすいようにデザインされたこれらの容器は、販売メーカーによって蓋と本体それぞれに異なる色や形状が採用されており、作者はこの「白」や「黄」、「緑」に「赤」などの鮮やかな色を纏った特徴的な形状を際立たせるべく、個々の色に応じて試行錯誤を繰り返しながら背景紙とライティングを変更した。そうして生み出された作品からは普段の生活の中で何気なく目にし、触れている容器とは思えない新鮮な息吹が宿っており、イタリア出身の「シュルレアリスム（超現実主義）」の画家ジョルジョ・デ・キリコ が描く絵画作品を彷彿とさせる、力強い色彩に仕立てられている。かつてフランス出身の芸術家マルセル・デュシャンが偽名でサインを書き記しただけの便器を作品名《泉（または噴水）》として出品したことに端を発する、「レディメイド（既製品）」を用いた芸術の歴史。その系譜と精神とを見事に写真で表現した一冊。

TAG：金子親一,青幻舎