Ossa

イングランド南東部の都市イースト・サセックス州を拠点に活動を行う写真家Kathryn Martinによる作品集。英国発のオーガニックコスメブランド『Neal's Yard Remedies』に専属の写真家として所属していた経歴をもつ作者は、働く中で野生の花やハーブを中心とした植物の知識を得たことをきっかけに、プライベートの中でも自然や環境へと関心を持つようになった。2022年に作者が暮らす自宅とスタジオから程近い白亜丘陵の広がる国立公園「イットフォードヒル」の頂上付近に、青銅器時代に人類が暮らしていた集落跡があると知った作者は、1949年から1953年にかけて考古学者らによって行われた発掘調査に関する資料に辿り着き、現在の風景に秘められた、人類と自然の間で紡がれてきた関係性や地層の中で眠る化石の存在まで写真を通して紐解いていった。書籍名はラテン語で「骨・石・心臓」を意味する単語から引用されており、作者はここに「自分の魂」や「物語の骨格」という意味を併せて重ねている。また本書には作者が松尾芭蕉の詩に感化されて手がけたプロジェクト「Come, See Real Flowers of This Painful World」(2020年)の際に制作された9枚のプレートも掲載。その姿を大きく変えることなくこの地で繁栄を続ける野生種の植物が持つ脆弱性と回復力についての考察も合わせて行われている。

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