NATURE GUIDE

科学技術が進歩を遂げ、人類が火星などの地球以外の惑星へと移住するようになった際に、人類は自給自足の生活を営むことができるのか。この課題を検証するべく1991年に外界から完全に遮断された状態で世界各地から持ち込まれた3800種類の植物と250種類の虫や小動物を用いて熱帯雨林やサバンナ、海、湿地帯といったさまざまな環境が再現された実験施設「バイオスフィア2」が1991年にアリゾナ州の砂漠で建設された。その後この施設内で8人の男女からなる研究者が2年間に及んで実際に自給自足の生活を行い、近未来を予感する研究に世間は大きな注目を集めた。しかし穀物を脱穀していた際に誤って事故が起きたために入院を余儀なくされて、再び施設に戻る際に新たに物資を持ち込んだり、酸素を外部から取り入れたりと厳格に実験が行われなかったために科学的根拠となり得る成果は得られず、215億円という莫大な資金が溶けただけで、期待を寄せていた人々から非難を浴びた。本書は写真家・高田洋三がこの実験の舞台となった施設「バイオスフィア2」を2008年から2018年の10年にわたって撮影した写真集。この実験終了後は、紆余曲折ありながらも現在はアリゾナ大学が研究施設として所有しており、一般人の見学を受け付けているほか、次世代の有人宇宙開発を担う人材育成を目的としたフィールド実習なども行われており、有効活用がなされている。「人工物」と「自然」という対照的な両者が共に融合している光景を捉えた写真を通して、「自然」とはなにかを深掘りしている一冊。

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