Arcadia

イギリスの中でも有数のリゾート地であるブライトンに拠点を置いて活動を行う写真家Ian Howorthの初の作品集。ペルーでイギリス人の父親とペルー人の母親のもとに生まれ育ち、16歳でイギリスに定住するようになるまでの間に、3つの国と9つの家を転々としてきた作者は、自らの「故郷」と呼べる場所がどこなのか定まらず、転居する度に自身がその土地の「部外者」になった感覚を味わい、不安を覚えてきた。書籍名である『Arcadia』とは、古来から「牧人の楽園」として知られ、肥沃で豊かな土壌という伝承が語り継がれている土地名であり、ギリシャのペロポネソス半島中央部に存在したとされている。詩人や芸術家、牧人らが抱いてきたこの土地への憧憬と、作者自身の理想の「故郷」を探る思いとが重ねられており、自身の思い出を辿るような、どこかノスタルジアを感じる写真が収められた一冊。

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