EDITH

イギリス人写真家であり、ロンドンを拠点とする出版社兼書店「IDEA」の創設者の一人である Angela Hillの作品集。本書は20年間に渡って娘を写真に収めた集積記録であるが、主に作者の第一のモデルとなった十代の頃を中心に構成されており、父親に対する印象が大きく変わる思春期ならではの撮られることに対するあからさまな不快感は被写体と写真家の関係が親子であるからこそ醸し出される、演出では生み出せないリアリティーに満ち溢れている。本書に収められている写真の多くが、ファッション関係のエディトリアルのために制作されたものであり、メンズファッション誌『Man About Town』に向けてスコットランドで撮影されたものや『Doesn’t Exist』誌に掲載された物語のために撮ったものなどが含まれている。また当時、作者と交流のあった Ari MarcopoulosやCollier Schorrなどの写真家たちにも撮影されており、中でもCollier Schorrは序文として「I don’t have a kid（私には子供がいない）」を寄稿している。ヘアメイクやライティング、レタッチを用いることなく35ミリフィルムで撮影された写真は自宅の寝室やキッチン、家族旅行に向かう電車の中など、生活の中で撮影されており、作者のスタイルが申し分なく体現されている。演出なしにそのまま切り取られた日常に共感を覚える一冊。

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