【再入荷】The Cliff

金沢を拠点に活動する写真家 河野幸人が2018年から2023年にかけて福井県の越前加賀海岸国定公園に位置する景勝地「東尋坊」で撮影を行った写真を収めた写真集。世界でも稀有で日本国内では最大の輝石安山岩の柱状節理を観察できる「東尋坊」は地質学的に魅力的な場所であるだけでなく、「東尋坊」の名前の由来となった僧侶についての伝説から、古典的なサスペンステレビドラマのクライマックスシーンに加えて、自殺スポットとしての要素など多面的な側面を持つ場所である。作者は2018年に初めて「東尋坊」を訪れた際に、自殺や呪いといった負の印象がある場所にもかかわらず、多くの観光客が土産物店で列を成したり、気軽に写真を撮っているのを見て衝撃を受けた。その出来事をきっかけに「東尋坊」にまつわる研究を様々な角度から5年行ったのちに、作者はこの場所に抱いていた「自殺」や「僧侶の悪霊」といったネガティブな印象の多くは、実際に目にした訳ではないために、人々は噂程度にしか捉えていないからだという結論に至った。写真の出現によって、これまでは捉えられなかった瞬間を証拠・記録としての残せるようになったが、自動生成AIの出現で偽の画像をリアルタイムで生成できるようになり、写真が確かな証拠資料としての価値は損なわれてしまった。そこで作者が本書で試みているのは、写真が持つ不確実性をもう一度開くことで、写真が写す真実とは何かを再考することである。「東尋坊」に関する様々な資料と実際に撮影した写真とを大まかに結びつけることで、写真が持つ確実性と、その曖昧さや流動性といった不確実な要素を調査し、写真の真なる価値を追求した一冊。直筆のサイン入りのプリント付き。

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