RAYON VERT [SECOND EDITION]

スイス人フォトグラファー、Senta Simondの初作品集。『RAYON VERT』は、本義では光学現象の名称である。この光学現象とはラテン語で「緑の光線」を意味し、空気が澄んだ日の太陽が沈む瞬間に放たれる光のことを指す。またそれと同時にフランス人映画監督であるエリック・ロメールが1986年に制作した作品のタイトルでもあり、いずれもこのポートレート作品のテーマとして反映されている。そんな本作は、アーティストとモデルとの間に生じる関係性の伝統的な様式を継承している作品としても捉えることができ、既存のもの、あまりにも頻繁に現れる定型文的なもの、女性的な表現に呼応して描かれている。事実に基づいたそのままのイメージを写し出しており、男性支配的な視点での美しさは全く無い。作者の交友関係の中から選ばれた20〜30歳の女性のポートレイトは、イメージから多分なものを外し装飾的な要素の使用を避けている。そのアプローチは真正面から被写体を写すということや身に付けているものにまで及び、極限までその表現を突き詰めようとしている。ますます商業的になっているメディアから若者の図像を取り戻すという一つの問題提起を掲げる前衛的な一冊。

TAG：Senta Simond,KOMINEK BOOKS