O by Luis Alberto Rodriguez

ベルリンを拠点に活動するアメリカ人アーティスト、Luis Alberto Rodriguezの作品集。人生の自然落下、自己の構築、精神的な運命との繋がりを探る一つのシリーズを通じて、写真に対する演出や具体的なアプローチをそぎ落としていく実験的な一作。 本書のタイトルである「O」は、ゼロやリセットの意味が込められており、全てを意のままに操れない人生における苦しみとそれを乗り越えた後の関係、そして純粋な自分を探し彷徨う中での息遣いや吐息、循環、そして全ての音に対して開かれている様子を表すシンボルとして据えられている。 作者は作品制作のために身体、年齢、生い立ち、アイデンティティーの異なるキャストを採用し、意識と無意識との間で揺れ動くようなヌード作品を創り出す。被写体が自らをさらけ出せるようにと作者が促すことで、被写体の身体は振り子のように振り回されながらも次第に落ち着き、以前にも増して優美に、そして着飾らないそのままの自分を表現する。そうしてカメラの前に現れては消えゆく被写体の力強さや美しさに作者はカメラを通じて精神的に関わっていく。そうして生み出された印象的なヌード作品と、作者の出身地であるドミニカ共和国を思い起こさせるコーヒーカップを用いた占い「タッセオグラフィー（※註）」が描くイメージとを対話させることで被写体だけに留まらず、作品を見る人までも我々の現在の状態、そして着飾って自分をさらけ出していないことに気付かされると同時に先行きの見えない未来に対しての不安までも思い起こさせられる。
※註 別名「紅茶占い」。紅茶を飲み終えた後、カップに残った茶葉が描く形で占う。

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