ADVICE FOR YOUNG ARTISTS

国際的写真家集団「マグナム・フォト」の正会員を務めるアメリカ人写真家・Alec Soth。これまでRobert FrankやLee Friedlanderなど多くのアメリカの写真家らが実施してきた〈ロードトリップ（アメリカ国内を車で旅してその先々で出会った風景や人々を大判カメラで撮影する手法）〉で作品を生み出してきたSothであるが、今作では1930年代から70年代に活躍したアメリカの写真家・Walker Evansが最晩年に制作したインスタントフィルムカメラ『Polaloid』を用いた作品群から得た着想を元に、2022年から2024年にかけてアメリカ全土、25もの大学の美術学部を巡り撮影した、アーティストを志す若者らを捉えたポートレート作品をはじめ、アトリエやホワイトボードの様子、さらに学生たちによる作品や格言が記されたポストイットなどが織り交ぜて収録されている。書籍名である〈ADVICE FOR YOUNG ARTISTS〉は直訳すると〈若きアーティストたちへのすすめ〉となるが、これは発刊当時54歳のSothが自身のアーティスト人生の中で得た経験や知識を若者らに指し示すということではなく、〈人生の様々な段階において制作することの意義や時間、そして年齢や経験を重ねていくことの意味について考察する〉という意図が込められたもの。そうした背景から、本書にはSothが学生らと共に時間を共有しながら撮影した作品が収められており、学生らによる作品の中のあちらこちらにSothの姿を目にすることができる。かつて新進気鋭であったSothもまた歳を重ねたアーティストの一人へと変容を遂げたことを感じる一冊。

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