The Screw

6年間の小学校教員を経て、同じく教員の妻からの後押しで写真家へと転身を遂げた吉田亮人は、レンガ工場の労働者の姿を捉えた「BRICKYARD」でデビュー以降、革を鞣す職人の姿を捉えた「Tannery」などインドとミャンマーの間に位置する国・バングラデシュの労働者の姿を捉えてきた。 その最新作となる本書は、はじめて2012年にバングラデシュを訪れた時から足繁く通ってきた、船の推進装置であるスクリューを製造する工房の人々を捉えた一冊。ここでは砂型を準備して金属を流し込む場面や、鋳造後に研磨して形を整える様子、そして船への取り付けと様々な局面のスクリューの姿が製造過程で携わる労働者の姿とともに収められており、中には大人たちに混じって働く屈託のない朗らかな笑顔を見せる子どもの姿も垣間見える。 巻末にはサッカ・いしいしんじが本書に向けて書き下ろした小説「スクリュー」も掲載。写真とは異なる側面からスクリュー工房の日々が描かれている。 また装丁はこれまで吉田の写真集を数多く手がけた装丁家・矢萩多聞によるもので、一つずつ人の手で作られているスクリュー同様に微妙な差異を生み出すべくリソグラフ印刷機で印刷した写真を貼付けしたのちにタイトルをスタンプで押印する方式を採用。 手作業を組み込むことであえて一冊ずつに労働の痕跡が残されている。

TAG：吉田亮人,Three Books