光の王国 The Light/Mustang

光や時間といった無形のものに対し「鋳造」という行為を軸に作品を発表する山西ももによる作品集。
東京藝術大学の山岳部で出会った友人がチベットにある未踏の山の登頂に挑んだことに触発されて、ネパールやチベットのヒマラヤ山脈を度々訪れるようになった山西は、2008年まで王国として自治されていたネパールのムスタンで登山中、偶然踏んだことで割れた石の断面より姿を現した化石を目の当たりにして、標高5000mに及ぶヒマラヤ山脈の山肌が4億6千万年前には海底であったこと、そして地表に降り注ぐ光が常に風景を生み出し続けていることを体感し、大学で専攻した鋳金の授業を通して得た経験に基づき、カメラを鋳型と位置付けて、この記憶を写真として<鋳造>することができないかと思い立った。
本書は再びネパールのムスタンを訪れて、その場で手に入る段ボールや空き缶で作成した手製のピンホールカメラで撮影した作品を、自ら描いたイラストとともにまとめた一冊。
ここではかつて海底であり王国でもあったこの土地固有の記憶を光とともにフィルムへと焼き付けた作品が収録されており、仮説立てから実践、そして<写真＝光の鋳造物＞という独自の定義が成立するに至った作者の制作過程とその軌跡を辿ることができる。

TAG：roshin books,山西 もも