Yin-Yang

上海在住の写真家 周碩瑛(Zhou Shuoying)の写真集。幼い頃から中国の伝統美学に触れてきた経験から生まれる作者の作品は、直感的な画面の表現と東方美学特有の視覚的な雰囲気が漂っている。本書のタイトルでもある『YIN-YANG（陰陽）』は、2017年から続いている長期的な静物写真の連作。このタイトルには東洋医学の独特な陰陽学説と紐づけられおり、この陰陽学説は男性＝陽で、女性＝陰という認識で、男性は外に向かって活動的に働き、女性は家庭を守り、潤いの性質をもつ存在だとする前時代的な性別とジェンダーにまつわる価値観への対峙と、世間に疑問を投げかけるという意志も込められている。被写体には中国の伝統的なおやつである「柿餅」や「漬物」に、少し赤い尖った角を持つザクロといった野菜や花、屋台の食べ物、果物など生活にありふれていて安価な物が使用されており、室内で光とを組み合わせて、様々な角度で観察しながら試行錯誤の実験を繰り返すことで作品が生み出されている。例えば、押されて逆立ちした漬物や、乾燥してしわだらけになった賞味期限切れのバナナに、ムラサキキャベツの表面の葉脈などを近接で捉えており、単純で普通なものを通してジェンダー問題へと迫る作者独自の視点が活きた一冊。

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